尿検査の「タンパク尿」は腎臓疾患の主要な指標ですが、動脈の硬さの指標となる上腕〜足首間の脈波伝播速度(baPWV)で分かるというもので、タンパク尿が出る前に慢性腎臓病を発見できる可能性がありそうです。
動脈の硬さの亢進は、心血管疾患発症の危険因子とされますが、慢性腎臓病(CKD)発症についても有意な予測因子になり得ることが東京医科大学第二内科の冨山博史氏らによるコホート研究で明らかにされ、第32回日本高血圧学会総会(2009年10月)で報告されています。
(脈波伝播速度についてはページ下部を参照)
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病は、糖尿病や高血圧による腎臓障害、IgA(アイジーエイ)腎症などの慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など沢山の原因による慢性に経過する腎臓病の総称。2002年に米国で提唱され現在は世界的な用語となったものです。
慢性腎臓病(CKD)は病気ではなく、腎臓の機能が低下している状態(病態)です。腎臓の機能が低下し、腎臓が障害をおこした状態(病態)であり、おしっこ(尿)からタンパクが出たり、腎臓の機能が100点満点中60点未満、というのが3ヶ月以上続いた状態をいいます。
慢性腎臓病は予備軍含めると2000万を超える糖尿病と匹敵する位、数が多い病気というか病態です。この中で、腎不全による透析を受ける患者さんは国内ではおよそ27万人で、世界全体の半数は日本人となるようです。
慢性腎臓病は、腎臓が悪いというだけでなく、動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳卒中になりやすくなること。腎臓の働きが正常範囲の60%未満になると、心筋梗塞や脳卒中になる危険が増すといわれています。
● 慢性腎臓病の原因は
糖尿病、高血圧、慢性腎炎等があると慢性腎臓病になりやすく、 CKDの危険因子は、年齢、血圧、血糖値、コレステロール値、中性脂肪値、喫煙、BMI、薬物治療などです。
● 日本人は元々腎臓の機能が悪い人種
日本人は腎機能が弱い人種とされる。
日本人は、食塩感受性が白人と比べてはるかに高い民族ということが解明されていて、30歳以上の半分近い人が高血圧患者、また、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人は、2倍の頻度で高血圧になるというデータがあります。
高血圧は慢性腎臓病の主要な原因であるとともに、この病気を悪化させる最大の危険因子でもあり、かつて高血圧患者は、辛いものばかり食べ、やせたイメージでしたけれど、今は、小太りで生活習慣病をいくつもかかえていることが多いそうです。
日本人の食塩感受性が高くなる原因は、
- レニン・アンジオテンシン系のホルモン分泌が多く食塩に敏感な遺伝子タイプ
- 体内に食塩をためるアルドステロンの合成酵素遺伝子
- 腎臓で食塩を再吸収して体に食塩を取り込むタンパク質の遺伝子の発現頻度
(日本高血圧学会)
ちなみに、この学会の1日の食塩摂取量は6グラム未満。
●腎臓のアレコレ
- 腎臓の働きが乱れると「黒」い色が肌に現れてくる(地黒の肌の原因?)
- 日本人は中国人よりも腎機能が弱い(料理や漢方に注意?)
- 日本人の腎臓の機能低下は薄味が弱くしている(ちょっと危険な見方?)
- 塩分摂取で不定愁訴が消える(人によってはアリですね)
- 膝とか腰が痛いときは腎臓が原因していることが多い(そーです)
- 甘いもので太る人は腎臓が弱い人(甘い物と言わず炭水化物と考える)
- 日本人は人工透析患者が世界一多い(約27万人で、年に3.6万人が新規の患者)
- 腎臓は自分で良くするには股割しかない( ..... )
- 腎が弱いと病的に冷たい飲物を好むので、さらに弱くなる
- 生腎臓の仕入れ価格は1万米ドルで、販売価格は16万米ドル
- 腎臓の弱い人は後頭部が白髪、肝臓の弱っている人は側頭部が白髪になりやすい
脈波伝播速度でメタボ早期診断:
心電図や心音図は聞いたことがあります。近年は腕と足首の脈波から簡単に計測する診断機器が開発され、脈波伝播速度はメタボリックシンドロームの早期診断や、高血圧の薬剤加療のフォローアップに使える新しい診断法として注目されています。
血圧脈波検査装置
脈波の伝わるスピードは、血管が硬くなるほど速くなるという原理を利用し、2点間の脈波の脈波伝播時間から算出するもの。
2007年に改定されたヨーロッパ高血圧管理ガイドラインでは、PWV、ABIが血管障害のリスク判定指標として採択され、国内では2008年4月にスタートした特定健診・保健指導用に厚生労働省が作成した「標準的な健診・保健指導プログラム保健指導における学習教材集」において、PWV、ABIが動脈硬化のチェック項目として記載されています。
注) PWVは、Pulse Wave Velocityの略語、baPWVのbaとは、上腕をbrachial、足関節をankle ということによるもの。
この他にも脈波を見るものに、指先で血管年齢(末梢家管の柔軟性)が分かるものや、血圧測定器具に組み込まれた機能で硬化度を16段階で知らせるものなどもあります。今回の報告はこれらを使うものではありません。
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